◆家づくりのコラム:木造耐火建築の構造とメリットについて

木造耐火建築の構造とメリット

 

 

木造の建物と言うと、鉄筋コンクリート造や鉄骨造に比べて、なんとなく燃えやすそうというイメージを持つ人は多いでしょう。

木造住宅でも、火災に強い「耐火構造」にすることができます。

「耐火構造」にすれば、防火指定地域の中で一番規制の厳しい「防火地域」でも木造住宅を建てることができます。

今回は、木造でありながら耐火建築物の基準を満たす、木造耐火建築物の構造とメリットについて解説します。

 

木造耐火建築の基本構造

 

防火地域以外に建てられるような、一般的な仕様の木造住宅では、耐火建築物と認められません。

木造耐火建築物にするためには、以下の部分を燃えにくくするために計画や作り方に気を使う必要があります。

 

  • 間仕切壁被覆材
  • 外壁 屋外側
  • 外壁 室内側
  • 柱、梁
  • 屋根
  • 階段

 

一般的な木造住宅の場合、燃えにくくするための被覆材として、せっこうボードは1枚張りされます。

木造耐火建築物の場合、ほとんどの場所のせっこうボードを2枚張り以上にして被覆します。

具体的にどのような仕様にする必要があるのか、順番に詳しく解説します。

 

■ 間仕切り壁被覆材の仕様(1時間耐火構造)

「間仕切り壁」とは、室内の部屋と部屋を仕切る壁のことです。

木造耐火建築の場合、以下のいずれかの仕様にします。

  • 強化せっこうボード2枚以上張り 厚さ42mm以上
  • 強化せっこうボード2枚以上張り 厚さ36mm以上+繊維強化セメント板張り 厚さ8mm以上
  • 強化せっこうボード 厚さ15mm以上+軽量気泡コンクリートパネル 厚さ50mm以上

 

■ 外壁 屋外側の仕様(1時間耐火構造)

外壁の屋外側は、木造耐火建築の場合、以下のいずれかの仕様にします。

  • 強化せっこうボード2枚以上張り厚さ42mm以上+金属板、軽量気泡コンクリートパネル、窯業系サイディング、モルタル、漆喰塗りのいずれか
  • 強化せっこうボード2枚以上張り 厚さ36mm以上+繊維強化セメント板張り 厚さ8mm以上+金属板、軽量気泡コンクリートパネル、窯業系サイディング、モルタル、漆喰塗りのいずれか
  • 強化せっこうボード 厚さ15mm以上+軽量気泡コンクリートパネル 厚さ50mm以上

 

■ 外壁 室内側の仕様(1時間耐火構造)

外壁の室内側となる部分の被覆は、木造耐火建築の場合、以下のいずれかの仕様にします。

  • 強化せっこうボード2枚以上張り 厚さ42mm以上
  • 強化せっこうボード2枚以上張り 厚さ36mm以上+繊維強化セメント板張り 厚さ8mm以上
  • 強化せっこうボード 厚さ15mm以上+軽量気泡コンクリートパネル 厚さ50mm以上

 

■ 柱、梁の仕様(1時間耐火構造)

構造材としての柱と梁は、木造耐火建築の場合以下の仕様にします。

  • 強化せっこうボード2枚以上張り 厚さ46mm以上で覆う

 

■ 床の仕様(1時間耐火構造)

一番下の階以外の床上、床下の被覆は木造耐火建築の場合以下の仕様にします。

床上:強化せっこうボード2枚以上張り 厚さ42mm以上

床下:強化せっこうボード2枚以上張り 厚さ46mm以上

 

■ 屋根の仕様(30分耐火構造)

屋根の葺き材・仕上げ材・室内側の被覆はそれぞれ木造耐火建築の場合、以下の仕様にします。

 

■ 葺き材・仕上げ材

  • 不燃材料で葺く

 

■ 室内側の被覆(最上階の天井)

  • 強化せっこうボード2枚以上張り 厚さ27mm以上

 

■ 階段の仕様(30分耐火構造)

階段は段上側・段裏側それぞれ木造耐火建築の場合、以下の仕様にします。

  • 強化せっこうボード2枚以上張り 厚さ27mm以上

 

木造耐火建築物は、一般的な木造住宅に比べて、壁や構造部分の厚みが増します。

そのため、家の中でも小さな空間として計画をする廊下や収納、トイレの計画をする際は特に狭くならないよう注意が必要です。

 

 

窓枠部分を見ると壁の厚みが良く分かります!

 

 

防火地域で木造住宅を建てる6つのメリット

 

防火指定の中で最も規制の厳しい「防火地域」は、駅の周辺や繁華街などの建物が密集する地域が指定されます。

建物が密集する場所では、ひとたび火災が発生すると、隣の建物に火災が広がる(延焼)リスクが高いため、建物の燃えにくさが重視されます。

「防火地域」では、最低限「準耐火建築物」であることが求められ、100㎡を超える場合は「耐火建築物」とする必要が出てきます。

100㎡の建築物の広さは、だいたい30坪程度です。

核家族が暮らす住宅の場合、狭すぎず広すぎない、ちょうど良い広さと言えますので、防火地域内で木造建築を希望する際、100㎡を超えない範囲の計画を検討してみるのも、ひとつの手段です。

 

一般的には鉄筋コンクリート造や鉄骨造の建築物があてはまりますが、国土交通大臣の認定を受けた特殊な木造建築も耐火建築物として認められています。

 

「防火地域」でざわざわ木造建築を建てる必要はある?と思われるかもしれません。

木造建築を建てる6つのメリットを解説します。

 

1.建築費が安い

RC造や鉄骨造の建築物に比べて、建築費用が安く工期も最も短いです。

 

2.狭小地でも対応可能

RC造や鉄骨造の建築では、大型の重機の乗り入れが必要になりますが、木造建築はそこまで大型の重機は必要ありません。そのため、狭小地や道が狭い場所でも建築ができます。

 

3.火災では鉄骨造よりも崩れにくい

鉄骨造は火災に強いイメージがありますが、鉄は約550℃を境に一気に強度が低くなり、急に倒壊する恐れがあります。

火災が起きても、長く強度を保つことができるのは木造建築です。

消火活動も比較的行いやすいと言われています。

 

4.耐火構造なら火災保険の料金も安くなる!

木造住宅はほかの構造に比べて火災保険料が高額ですが、木造耐火建築の場合、一般的な木造住宅よりも安くなります。

 

5.設計の自由度が高い

木造耐火建築物は、ほかの構造に比べて設計の自由度が高いです。

将来的な間取り変更や、リフォームの自由度も高いです。

 

6、環境にやさしい

住宅に使われる主な材料が木である木造建築物は、RC造や鉄骨造に比べて最も環境にやさしい構造です。

 

 

都心の防火地域でも安心して木造住宅が建てられます♪

 

 

コスト面から、環境配慮まで考慮すると、木造耐火建築物はメリットの大きい構造ということがわかりますね。

実際、木造で耐火建築物を作れる建設会社はかなり絞られます。

防火地域で100㎡を超える木造建築を建てるためには、設計から施工まで、一定の技術力が必要になりますので、実績が多い建設会社を選びましょう。

 

 

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門前仲町の木造耐火住宅

墨田区の木造耐火賃貸併用住宅

東京スカイツリーを望む木造耐火住宅

◆ 執筆者プロフィール ◆

satou_san

ー 佐藤結伽 ー
2級建築士。
2人娘の育児にも奮闘中。
最近、自邸の建設をし
注文住宅を購入する事の素晴らしさと、大変さを身をもって経験した。