◆家づくりのコラム:工法について

知っておきたい! 住宅の工法についてのお話し

 

 

 

注文住宅を、どのような工法で作るか?ということは、家づくりの最初にぶつかる大きな悩みかもしれません。

日本の住宅には、大きく木造、鉄骨構造(S造)、鉄筋コンクリート構造(RC構造)があります。

今回は、住宅に使われる工法について、基本的な特徴や価格帯、選び方のポイントをお伝えします。

それぞれの工法についての基本的な知識を確認して、自分に合った家づくりのヒントを見つけましょう。

 

 

木造住宅3つの工法

 

木材を骨組みにする「木造」には、大きく3つの工法があります。

日本の伝統工法である「在来軸組工法」、ハウスメーカーや建売住宅で広く普及している「ツーバイフォー工法」、木造の温かさと建物の強さを両立した「SE構法」です。

それぞれの特徴を詳しく解説します。

 

■ 在来軸組み工法

 

坪単価目安:70~90万円

日本の伝統工法です。柱や梁などの構造材を、仕口と呼ばれる加工や金物で繋げて構造体を組み上げて作られます。

建物の強度は、筋交いや壁に張られた構造用合板によって支えます。

使用する材木の樹種によって価格帯は大きく異なります。

 

特徴

  • 建築費用が比較的安い
  • 設計の自由度が高い
  • 間取り変更などのリフォームがしやすい
  • 化学物質を排除した家がつくれる
  • 木材の調湿効果や五感から感じられる癒し効果などの恩恵を受けられる
  • 温かみがある
  • 梁や小屋組み、柱などの構造体を見せられる
  • 品質がばらつきやすい
  • RC造などに比べると的耐久性は低い
  • 比較的火災に弱い
  • 虫害が起こりやすい
  • 比較的気象災害に弱い

 

こんな場合におすすめ!

  • 伝統工法が好き、信頼している
  • 木の温かみを活かしたい
  • 工期を急がない
  • 構造部を見せる家づくりがしたい
  • 将来間取りを変更するリフォームがしたい
  • 自然派住宅に住みたい(化学物質に敏感な家族がいる)
  • 建物が密集した地帯ではない
  • 耐久性、気密性、耐震性、空調設備にはそこまでこだわらない
  • 予算をなるべく抑えたい

 

■ ツーバイフォー工法

 

坪単価目安:50~80万円

大手ハウスメーカーや建売住宅で広く採用されている工法です。

2インチ×4インチの寸法の木材と、合板を組み合わせてパネル状にし、箱を組み立てるようにして面で作る工法です。

坪単価は、最も低い水準になります。

 

特徴

  • 在来軸組み工法に比べて耐震性に優れる
  • 工事期間が短い
  • 気密性が高い
  • 断熱性能に優れるため、全館空調などによる空調管理がしやすい
  • 建築に高度な技術が必要なく、品質にばらつきが生じにくい
  • リフォームの際の間取りの変更が難しい
  • 構造体を見せることができない
  • 木材の調湿効果などには期待できない
  • 気密性が高いため、構造体の防腐対策が必要
  • RC造などに比べると的耐久性は低い
  • 虫害が起こりやすい

 

こんな場合におすすめ!

  • 予算を抑えて気密性、耐震性、品質に優れる住宅を作りたい
  • 工期を急いでいる
  • 全館空調がしたい
  • 建物が密集した地帯ではない
  • 将来間取りを変更できなくてもいい

 

■ SE構法(木造耐震構法)

 

坪単価目安:90万~110万円

構造用集成材という強度と品質が明確化された材料と、SE金物という非常に耐久性に優れた金物によって、木材の質感を活かしながら、RC構造や鉄骨構造に使われるラーメン構造と同様の手法で建築物を形成する構法です。

 

特徴

  • 構造計算によって優れた耐震性を実現している
  • 木材を主に使うので環境に優しい
  • 大空間で自由度の高い設計ができる
  • 大きな開口部が設計できる
  • 金物がすっきりしているため、構造体を見せることができる
  • 将来性を見越した設計をすることで、リフォームにより間取り変更もできる
  • 構造体に関係する場合、急な間取り変更ができない
  • 集成材を多用するため、在来軸組み工法よりも化学物質を発散する

 

こんな場合におすすめ!

  • 木造住宅に住みたいが、建物の強度も重視する
  • 木造住宅で大きな空間と、大きな開口部がほしい
  • 将来は間取りを変更するリフォームがしたい
  • 工期を急がない
  • 建物の資産価値を高めたい

 

独自のSE金物で接合部を強化し耐震性能を高めています!

 

鉄骨造2つの工法

 

鉄骨造は、鋼材とボルト、溶接によって構造体を組み上げる工法で、軽量鉄骨造と、重量鉄骨造に分けられ、鋼材の靭性を活かして強度を持たせる工法です。

それぞれの特徴を解説します。

 

■ 軽量鉄骨造

 

坪単価目安:70~90万円

厚さ6mm未満の鋼材を骨組みに用いた構造です。

材料が工場生産され、現場では組み上げるだけの作業になるため、品質がとても安定しています。予算は抑えられますが、木造住宅の在来軸組工法やツーバイフォーと比較すると高い水準です。

 

特徴

  • 工事期間が短い
  • 比較的工事費が安い
  • 虫害に強い
  • 鉄骨の品質にばらつきがなく、安定している
  • 耐震性に優れる
  • 高気密
  • 設計の自由度が低い
  • 材料加工等の準備期間が必要
  • 確実な耐火被覆と断熱工事が必要
  • 解体費が高い
  • 自然派の家づくりには不向き

 

こんな場合におすすめ!

  • 予算を抑えて性能や品質に優れた家がほしい
  • 工期を急いでいる
  • 駅前などの建物密集地帯
  • 将来は間取り変更をしない
  • 賃貸併用したい
  • 空調にこだわる

 

■ 重量鉄骨造

 

坪単価目安:100~120万円

厚み6mmを超える鋼材を骨組みとして用いた構造です。

3階建て以上の住宅でも大空間の確保が可能で、店舗や賃貸併用住宅に適しています。

 

特徴

  • 材料加工等の準備期間が必要で比較的工事期間が長い
  • 鉄骨の品質にばらつきがなく、安定している
  • 優れた耐久性・耐火性・耐震性・防音性を持つ
  • 虫害に強い
  • 高気密
  • 大空間が作れる
  • 大開口が作れる
  • 確実な耐火被覆と断熱工事が必要
  • 間取りの自由度は高いが、外観のデザインは限られる
  • 重いため強い地盤が必要
  • 解体費がかかる

 

こんな場合におすすめ!

  • 予算と工期に余裕がある
  • 地盤が強い
  • 駅前などの建物密集地帯
  • 丈夫で、長く建て替えのいらない建物を作りたい
  • 大きな空間や大きな開口部がほしい
  • 賃貸併用したい
  • 空調にこだわる
  • 火災保険を安くしたい
  • 建物の資産価値を高めたい

 

中高層のマンション建設にも人気です!

 

 

■ 鉄筋コンクリート構造

 

坪単価目安:120~140万円

鉄筋を配筋し、コンクリートを流し込み、構造体をつくる工法です。

圧縮力に優れるコンクリートと、引張力に優れる鉄筋を組み合わせることで、耐久性に優れ、大規模な建築物にも広く用いられる工法となっています。

 

特徴

  • 品質が均一
  • 優れた耐久性・耐火性・耐震性・防音性を持つ
  • 虫害に強い
  • 大空間の設計ができる
  • 大きな開口部が設計できる
  • デザインが自由
  • 木造に比べて建築場所の制約が少ない
  • 重厚感がある
  • 自然災害や火災に強い
  • 火災保険が安い
  • 結露が生じやすい
  • カビが発生しやすい
  • 建物が重いため地盤補強が必要
  • 解体費が高価
  • 工事期間が長い

 

こんな場合におすすめ!

  • 予算と工期に余裕がある
  • 地盤が強い
  • 駅前などの建物密集地帯
  • RC造の性能の高さや災害への強さを信頼している
  • 丈夫で、長く建て替えのいらない建物を作りたい
  • 大きな空間や大きな開口部がほしい
  • 賃貸併用したい
  • 空調にこだわる
  • 火災保険を安くしたい
  • 建物の資産価値を高めたい

 

 

とにかく頑丈な建物を希望の方はRC造がお勧めです!

 

 

工法の選び方5つのポイント

 

住宅に使われる工法の特徴を理解したところで、構造を比較し、選ぶ際に確認したい5つのポイントをお伝えします。

後悔なく暮らせるように、確認しましょう。

 

1.予算に合っているか

 

それぞれの工法は、使われている材料の違いから、建築費用が大きく異なります。

RC造のように強く、長持ちする建物を建てたくても、予算に合わなければ必要な広さの住宅を建てることができません。

土地の価格や、家づくりでこだわりたい設備など、予算を充てる部分のバランスを考えて構造選びをしましょう。

 

2.土地の環境で検討する

 

建築予定地が置かれている環境によって、適切な構造も変わってきます。

閑静な住宅街や、静かな環境の場合、木造住宅でも問題ありませんが、駅前のような建物が密集した環境や、崖下の土砂崩れが心配な地域の場合、そもそも木造住宅が建てられない場合があります。

そのほかにも、大きな道路や線路が近い環境の場合、防音に優れた構造や、振動に強い構造が適しています。

安全で快適に暮らせるよう、土地の環境に適した構造を選びましょう。

 

3.家族の健康状態を考える

 

健康に不安を抱えた家族がいる場合、できるだけ快適に過ごせる家づくりについて考えてみましょう。

アレルギー体質や、化学物質に敏感な家族がいる場合、身体に優しい自然な素材を使った家づくりが求められます。

高齢者は、部屋と部屋の温度差で体調を崩す場合があるので、全館空調などで室内の環境をなるべく一定にすることで、安心して過ごせるようになるでしょう。

気持ちが不安定になりやすい家族は、木材の温かさや香りの持つ効果に期待し、木材のよさを活かした家づくりをしてもいいですね。

家族皆が安心して快適に過ごすために、必要なことを検討しましょう。

 

4.工期から選ぶ

 

子どもの入学までに家を完成させたい場合や、前の住まいの更新が迫っている場合、自治体の補助金の期限が迫っているなど、家づくりにおいて、工期に余裕がないケースは多いです。

構造によって、必要な設計期間や工期は異なります。

工期が迫っている場合、工期内でできる構造を選ぶ必要がありますで、注意しましょう。

 

5.優先順位で決める

 

それぞれの工法の違いは、予算、耐久性、耐震性、見た目のデザイン、暮らしやすさ、リフォームのしやすさ、好みなど、いろいろなことがあります。

家は、地震などの災害に強ければ安心ですが、予算オーバーした家づくりをすると生活水準が落ちてしまいます。住まいづくりにおいて、何を優先するか検討し、適切な工法を選べるといいですね。

 

 

 

 

日本の住宅に用いられる、一般的な工法についてお伝えしました。

それぞれのメリット、デメリットを把握した上で、予算や要望に応じて適した工法選びをしましょう。

◆ 執筆者プロフィール ◆

satou_san

ー 佐藤結伽 ー
2級建築士。
2人娘の育児にも奮闘中。
最近、自邸の建設をし
注文住宅を購入する事の素晴らしさと、大変さを身をもって経験した。