◆家づくりのコラム:上がり框について

家の内外を隔てる 住宅の上がり框のお話し

 

 

 

 

上がり框は、「あがりかまち」と読む建築部材です。

名前を聞いただけでは、どの部分に使われるどのような部材かわからないという人も多いでしょう。

上がり框は、玄関の顔とも言える、家づくりの際は特にこだわって検討したい部分です。

今回は、上がり框とはそもそも何なのか?ということから、上がり框の種類、選び方のポイント、高さ選びのポイントについてお伝えします。

玄関の詳細を検討する際にぜひ参考にしてください。

 

 

上がり框とは?

 

上がり框とは、玄関の土間(土足で歩く部分)から、靴を抜いで上がる部分の段差に、床材の端部を隠すように取り付けられる横木のことです。

上がり框の役割には、次のことがあります。

 

  • 玄関の印象を決める

玄関扉を開けて、すぐ目に入る上がり框は、とても印象に残る部分です。

玄関は家の顔とも言われるため、上がり框はその家の印象を左右する存在とも言えるでしょう。

 

  • 外と中の境界

上がり框は、土足を脱ぐ場所を明確にする役割があります。

段差にすることで、靴を脱ぐ動作を促し、上がり框をまたいで家に上がることで、外と中の境界をはっきりさせることができます。

 

  • ケガの防止と部材の保護

上がり框がないと、床材の端部分がむき出しになり、大変危険な上に、端部分は大変脆いため、ぼろぼろになってしまいます

 

  • 端部分の補強

家に出入りする際、何度も踏んだり、腰かけたりする段差の端部分は、擦れたり、重みが掛かったり、とてもダメージを受ける部分です

丈夫な框材を取り付けることで、端部分を補強する役割があります。

 

 

上がり框の種類

 

上がり框に使われる部材には、優れた耐久性と見栄えが良いことが求められます。

主に使われる素材として、次の種類があります。

  • 無垢材
  • 集成材
  • ステンレス
  • 石材
  • タイル

それぞれの特徴について、順番に詳しく解説します。

 

■ 無垢材

無垢材とは、切り出した木材を框形状に加工したものです。

耐久性があり、硬く、傷がつきにくい広葉樹の木材が適しています。

ケヤキ、ウォールナット、カエデ、カバザクラ、メープルなど、木目が美しく高級感があるものが人気です。

一般的に、玄関ホールに使われる床材と同じ樹種のものや、同じ色合いのものが選ばれます。

無垢材は、使うほどに味わいが増し、色に深みが出てきて、愛着が湧きやすい特徴があります。

 

■ 集成材

薄い板状の木材を張り合わせ、框形状に加工したものです。

表面を加工せず、塗装で仕上げたものや、「突板」と呼ばれる薄い天然目の板で覆ったものや、木目や石目が印刷されたシート材で覆ったものがあります。

無垢材に比べて安価で、傷がつきにくく、好みの色を再現しやすいため、フローリングなどの内装材とコーディネートしやすい特徴があります。

 

■ ステンレス

金属板のステンレスも框として使われます。

薄い板状に加工し、框部分に被せて使う方法が一般的です。

冷たさがあるため、腰かける場合や直接肌に触れる場合、不快に感じることがあります。

耐久性に優れ、錆びにくい特徴を持ち、近代的でモダンな雰囲気があります。

 

■ 石材

薄い板状に加工した天然や人造石を框部分に被せて使う方法と、框形状に切り出して用いる方法、タイルのように張りつける方法があります。

予算や、求める意匠性に応じて使い分けられます。

玄関ホールの仕上げ材が石材の場合や、玄関の土間部分に石材を使っている場合、同じ材質で仕上げることで、統一感と空間の広がりを演出する効果があります。

石材は、高級な素材なため、使用することで重厚感がある、ラグジュアリーな雰囲気の玄関になります。

天然石を使う場合、変色や傷に注意が必要です。

 

■ タイル

框部分にタイルを貼って仕上げる方法です。

モザイクタイルから大判のタイルまで、さまざまなタイルがあるため、使用するタイルの種類によって、いろいろな表現を楽しむことができます。

高級ですが、耐久性に優れ、お手入れがしやすいため、框に適した素材と言えます。

 

 

上がり框の選び方6つのポイント

 

上がり框は、なんとなく床材と同じ色合いにして、あまりこだわらずに決めてしまう場合も多いです。

それでも問題はありませんが、こだわって決める際に知っておきたい6つのポイントについてお伝えします。

 

1. 床材と合わせる

框に接する床材は、玄関ホールの床材と、玄関の土間に使われる床材です。

玄関框は、このどちらかの素材や色合いに合わせて選ばれることが多いです。

合わせることで、空間に統一感が生まれ、飽きのこない落ち着いた雰囲気になります。

 

2.床材と合わせない

1でお伝えした方法と反対に、床材と素材も色柄も合わせない方法もあります。

全く違う素材や、色合いのものを使うことで、框の存在を目立たせることができます。

高級な無垢材や、石材、ステンレスなどを使い、框を玄関のシンボルとしたい場合や、個性的な雰囲気にしたい場合に適した方法です。

 

3. 細くする、太くする

框の太さは自由に選択することができます。

存在感をなるべく消したい場合、細くした上で、色合いも床材と同じものにすると、スッキリした印象になります。

細くても、色合いや素材を異なるものにすることで、存在を目立たせつつ境界感を演出することもできます。

太くすることで、安定感があり、落ち着いた雰囲気になります。

お好みや、求める空間の雰囲気に応じて、太さまでこだわれると楽しいですね。

 

4. 安全に配慮する

框に石材やタイルを使う場合、他の素材に比べて固さがありますので、頭をぶつけると危険です。

転倒しやすい家族がいる場合は、硬い素材は避ける、危険な角を作らないなど、素材や形状選びに注意しましょう。

1日に何度もまたぎ、腰かける部分なので、衣服の引っかかりや、つまずきがないようにすることも大切です。

サンプルを踏みつけたり、またいだりして、安全性を確認しておくと安心です。

 

5. 形状にこだわる

框と言えば直線のイメージですが、曲線形状のものも人気を集めています。

曲線にすることで、玄関が優しく、柔らかく、個性的な印象になります。

直線形状に比べて予算が必要になりますので、求める雰囲気や、使い勝手と併せて検討できるといいですね。

 

 

上がり框の高さ選び3つのポイント

 

上がり框を設置する際にできる、土間と玄関ホールとの段差の高さは、住む人の健康状態や、玄関での過ごし方、求める機能性に応じて決める必要があります。

高さ選びで失敗しないために、知っておきたい3つのポイントを解説します。

 

標準的な高さとは?

 

上がり框の高さは、現代の木造住宅の場合15~20cmが一般的です。

登りやすい階段一段分をイメージするといいでしょう。

これより低い場合、次のデメリットが考えられます。

  • 土間や外の汚れが室内に入りやすい
  • 雨や水分が室内に入りやすい
  • 腰掛けにくい

低いことで、さまざまなデメリットがありますが、段差が低いことでまたぎやすい、空間に一体感が出るという良さもあります。

 

逆に、高い場合、上り下りが大変というデメリットがありますが、土間から腰かける動作は行いやすくなります。

 

腰掛けやすい高さにする場合

 

玄関框を高めにして、腰かけやすいつくりにするとで、急な来客でも、気楽にゆったりコミュニケーションを取れたり、靴の脱ぎ履きがしやすかったり、帰宅時の荷物が置きやすかったりと、便利なことが多いです。

腰掛けやすく、玄関の段差としても適切な高さは、玄関の土間から30~40cm程度です。

健康な大人は難なく上がれる高さですが、お年寄りや、子どもには使いづらい高さになりますので、玄関段差の中間部分に「式台」を設置するなどして、使いやすさに配慮できるといいですね。

 

バリアフリーに配慮する場合

 

家族に足腰が不自由な人や、お年寄り、小さい子供がいる場合、全ての人が使いやすいバリアフリー住宅の基準に則り、高さを18cm以下にすることがおすすめです。

また、段差を全く無くしてしまう方法もあります。

その際は、家の中に汚れや水分が入りこまないように、グレーチングを設けるなどの計画をしておいた方が安心です。

10cm以下の段差は、10cm以上の段差よりつまずきやすいため、段差のサンプルを作ったり、近い高さの段差で、実際のまたぎやすさや、つまずきの危険性をシミュレーションしておくと安心です。

框の高さを低くすると、腰かけて靴の脱ぎ履きがしにくくなりますので、土間にベンチを置くと便利ですよ。

 

素材によっても印象が大きく変わるので、他とのマッチングも重要なポイントです!

 

 

玄関の上がり框とはそもそも何なのか?ということから、上がり框の種類、選び方のポイント、高さ選びのポイントについてお伝えしました。

全ての人が使いやすい框を計画することは、難しいかもしれませんが、優先順位を明確にして、こだわりたいポイントや、求める機能性、予算に応じて、納得できる框が計画できるといいですね。

 

 

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これまでの実績を踏まえ、デザイン住宅や高級住宅のエッセンスをふんだんに取り入れた、拘りの規格住宅となっています。

今回コラムでご紹介した上がり框も、オプションでカスタマイズできる為、自由にお好みの仕様へ変更する事が可能になっています。

よくある建て売り住宅では満足できない方や、ご予算に限りがあるがデザインにも拘りたい方にピッタリの内容となっていますので、マイホームをご検討のお客様は是非一度ホームページをご覧ください。

 

 

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◆ 執筆者プロフィール ◆

satou_san

ー 佐藤結伽 ー
2級建築士。
2人娘の育児にも奮闘中。
最近、自邸の建設をし
注文住宅を購入する事の素晴らしさと、大変さを身をもって経験した。